何故、ふぐの卵巣の猛毒が抜けるのか

 ごまふぐの卵巣には、5,000~10,000MU/g(マウスユニット)のテトロドトキシンが含まれています。そのテトロドトキシンとは、青酸カリの100倍、2~3mgで人の致死量に達するほどの猛毒です。

 それが卵巣の塩漬け後、値が30~50MU/gまで下がります。塩漬け期間に卵巣から水分が抜けていきますが、その時に大部分のテトロドトキシンが一緒に抜けていったと推測されます。卵巣を塩漬けにする際、塩析効果で脂質が分離し水分とともに外部に析出しますが、このとき毒素が希釈されるのではないかと考えられています。塩析効果は糠漬けの時期にも続き、テトロドトキシンの量は塩蔵時に原料の5分の1、糠蔵時に30分の1にまで低下します。もしその過程で抜けていくと推測するなら、塩漬けした後の残塩水や糠漬けの糠の中に相当な量のテトロドトキシンが残っていなければなりません。1987年に発表された毒性変化の調査では、総毒量は製造前と糠漬け1年後では約10分の1に減少しています。なんらかの減毒作用があったのではないかと考えられます。
 

 考えられるとすれば、微生物、乳酸菌による働きです。乳酸菌による発酵作用によって、糠漬内に残っているテトロドトキシンが分解され、毒量が減少するのではないかと考えられています。また、テトロドトキシンの非生物学的な構造変化によって毒量が減少する可能性もいわれています。

 ただ、今のところ、テトロドトキシンがどのように減少していくのかについての科学的な確証は得られていません。
 なぜ毒が抜けるのか、謎は残ったままなのです。

毒の平均化

 卵巣の毒性は同一魚種、同一時期でも、それぞれの固体により相違してます。

 塩漬け中、毒性の強いものから毒が滲み出し、毒性の弱いものへ毒性が侵入していきます。
おおよそ3か月ほどで、毒の平均化・均等化が起きます。