木桶のこだわり
創業以来、 大切に使われ続けてきた木桶には、長年にわたり染み込んだ味とそこにいる無数の微生物が発酵の手助けをします。
木桶も人と同じく、息をしながなら四季を超え生きているからこそ、美味しい糠漬けが出来上がるのです。
魚を漬け込んでいき桶いっぱいになったら、桶の縁に編んだ縄を一周させて糠に埋め込み、木蓋をします。
この木蓋や縄も天然素材のものなので、菌が働きやすく、また活発に育つので美味しい糠漬けが仕上がります。
このまぎ藁も昔から使い続けてきたものです。
自家製のいしる
いしるとはうるめいわし の魚醤のことです。いわしを塩漬けする際塩によりいわしの中の水分が外に出て溜まります。この水分を何年も寝かし熟成させ味わい深くします。
そののち、独自の方法により抽出します。こうしなければ、きれいな透き通ったいしるにならないのです。
こうして出来たいしるは、糠漬けの味を大きく左右する天然の調味料としての役割をはたします。このいしるがなければ、油与商店の味にならないといっても過言ではありません。
またこの自家製のいしるは、天然のアミノ酸がたっぷり含まれております。また、自然増殖した酵素・酵母・発酵微生物も含まれておりますから、自然発酵を助成します。
菌が宿る蔵
石川県 は日本で有数の雨量の多い地域です。湿度の高さは、自然発酵におおいに役立ちます。
漬け込んだ桶を貯蔵している蔵は、この気候に慣れ親しんだ土壁のものです。
この蔵の壁にも無数の微生物が存在します。この蔵が生み出す自然の力が発酵を手助けし、美味しい商品を作る大きな役割を担ってます。
桶の積み替え
発酵が加速する梅雨時期を経てその後真夏を迎えます。そして残暑が厳しい頃に、4段に重ねた桶の上下を入れ替えます。
桶にかかる圧を均等にしてあげるためで、そうすることにより、漬物の味も均等になっていくからです。
また、暑い時期に糠が発酵しすぎてしまうため、桶が倒れやすくなっています。桶の積み替えをし、圧を強めに調整することにより、旨味が桶の中により一層凝縮される意味もあります。
油与商店のこだわりとして、この積み替え作業の際、木桶をひとつひとつ丁寧に洗っていきます。発酵する桶には余分な油や汚れなどが出てきますが、きれいに洗うことにより桶の中の糠漬けに老廃物が入り込まずに、美味しさを維持できるということです。
桟(さん)を組む
漬け込んだ木桶を積んでいく際(また、上記の積み替えをする際)、桟(さん)を用います。
桟とは、 そもそも戸・障子などの骨組みという意や、土台や梯子(はしご)などに渡す横木の意です。
桶の蓋の上に、蓋の縁の端から端にかかるように、桟を並べます。
その上に、また漬け込まれた木桶を置き、そして桟を置きと4段になるまで重ねていきます。
この桟を使うのは、桶を倒れにくくするためです。
また、桶の中の商品に均等に圧をかけるためでもあります。