塩の種類・分類

塩は全て元々は海水ですが、どこから採られるかにより大きく3つに分類され、製法やミネラルの添加等によりさらに細かく分類されます。

海塩

海塩は、海水から採られた塩です。

 

①食塩

一般的に販売されている塩です。イオン交換膜透析法により、ナトリウムイオンとカリウムイオン抽出、濃縮し、真空蒸発缶により煮詰めて作られます。ミネラル等の添加はありません。

②自然海塩

完全天日塩は、海水を塩田や枝条流下式により濃縮し、太陽光と風だけで数ヶ月かけて結晶化させたもので加熱は行いません。

平釜塩は、海水を塩田や枝条流下式により濃縮し、平釜で煮詰め結晶化させたものです。


③再生加工塩
輸入した原塩ににがり等のミネラルを添加して成分調整を行った自然海塩加工のものと、イオン交換塩ににがり等のミネラルを添加して成分調整を行ったイオン交換塩加工のものがあります。

 

岩塩

岩塩は、昔海だった場所が地殻変動等によって陸地に閉じ込められ塩湖となり、その海水の水分が蒸発して次第に塩が結晶化し、その上に土砂が堆積して出来た塩の層から採取されたものです。
その内、溶解法岩塩は、岩塩層に水を注入すること等により、濃い飽和塩水を作り、真空蒸発缶で結晶化したもの。さらに、ミネラルを添加したものと添加しないものとに分かれます。また採掘法岩塩は、岩塩層に直接ボーリング、露天掘りをし、採掘したものです。

   

 

湖塩

昔海だった場所が地殻変動等によって陸地に閉じ込められ、そのうちに水分が蒸発して水の中の塩分濃度が高くなった湖が塩湖ですが、その濃い塩水をさらに蒸発させて塩分を結晶させ、湖塩が作られます。

塩の栄養成分

エネルギー 水分 灰分 ナトリウム カリウム マグネシウム
0kcal 1.8g 98.2g 38000mg 55mg 73mg
(100g当たり/食品成分データより)

現在の塩の製造工程

塩製造プロセスは
①海水の取水・ろ過工程
②採かん工程・・・電気透析装置により濃い塩水(かん水)の製造
③せんごう工程・・・かん水を煮詰めて塩を析出

となります。

塩の消費量・輸入量

日本の塩の消費量は年間約900万トンで、その内自給率は15%程度でほとんどが輸入に頼っており、輸入量 は世界一です。主な輸入先はメキシコとオーストラリアです。

日本での塩の消費の約80%は、ソーダ工業用、つまり塩をナトリウムと塩素に分解し、それを原 料として様々な工業用品をつくるため使われます。紙やアルミ、石鹸、ガラス・ホーロー製品、水道の消毒薬からコンパクトディスクまで塩を基礎原料として作 られているのです。その他皮のなめし、各種化学薬品の製造といった一般工業用にも利用されており、調味料や食品加工として使用されるのは約15%に過ぎません。

並塩~水産加工用

日本で海水からつくられている塩を大別すると、特級塩、食塩、並塩、白塩の4つの種類があります。

特急塩

・精選特級塩:塩化ナトリウム99.7%以上の高純度塩。
・特級塩:塩化ナトリウム99.5%以上の高純度塩。
・精選特級塩、特級塩はサラサラで純粋な塩です。苦汁分を嫌う用途に適します。苦汁分特有のくせがなく、高級品志向です。各種の粒径の塩があります。欠点は固まりやすいことで、長い間の保管はできません。

食塩

塩化ナトリウム99%以上の乾燥塩で、大きさは平均粒径0.4mm。
最も一般的な塩で家庭用としての小袋が塩事業センターから販売されています。苦汁分が0.3%位含まれ、特級塩より固まりにくい塩です。製造直後は99.5%程度の純度ですが、苦汁分が吸湿して通常は0.2%程度の水分があります。比較的サラサラして、分散性もよく、万能型の扱いやすい塩です。


並塩

 塩化ナトリウム95%以上で、水分約1.4%の非乾燥塩で、大きさは平均粒径0.4mmで最も一般的な湿った塩です。

苦汁分が多く、通常0.7%位含まれます。
湿った塩としては最も汎用性が高いです。

白塩

塩化ナトリウム95%以上、平均粒径がやや大きく、水分はやや少な目になります。

塩の安全性

日本の塩は砂濾過と膜透析をして製造され、海水汚染から完全に守られています。百万分の1ミリメートルの微細な孔径の膜透析であり、農薬、洗剤、船底防汚剤、重金属などの汚染をシャットアウトしています。また結晶化の時に加熱しているため、ほぼ完全無菌であり、食品衛生法第7条総合衛生管理製造過程(HACCP)に適応できる安全な塩です。

さらに 一般社団法人日本塩工業会の食用塩安全衛生ガイドラインで安全性に対する厳密な規格が定められ、検査態勢を確立しています。

塩づくりの歴史

日本で塩が使われるようになったのは、縄文時代の終わりから弥生時代にかけてといわれています。狩りをして暮らしていた頃は、動物の肉だけではなく内臓や骨の髄まで食べていました。そのため、塩を別に取る必要がありませんでした。内臓や骨の髄に は多くの塩分が含まれているからです。その後、農耕、定住生活を行うようになると米などの穀物や野菜を主に食べるようになり、必要な塩分を塩から取るよう になったと考えられています。

藻塩焼き

日本におけるもっとも古い塩作りの方法は、干した海草を焼いて残った塩の混ざった灰をそのまま使う方法です。6~7世紀になると干した海草に海水をか け、かん水(濃い塩水)を採るようになり、それを土器に入れて煮詰めて塩を作るようになりました。この方法は日本独特のもので「藻塩焼き」と呼ばれます。

塩地・塩浜

8世紀、奈良時代になると、海草にかわって、塩分が付着した砂を利用してかん水を採る方法「塩地」にかわります。大潮で海水に浸った砂は、次の大潮まで の間に乾燥し、塩が砂につきます。この砂に海水をかけ、かん水を採るのです。煎熬にも土器にかわって、焼いた貝殻、灰、土を塩水で練って作った「土釜」が 使われるようになりました。

9世紀になると効率的に塩を得るため採鹹地に手を加えるようになり、「塩浜」の形に発達しました。地域の条件により、(干満差が大きい地域の干潟が発達 した内海や河口などが主なところで)干満の水位差を利用した「入浜式」の塩浜と(干満差が小さい日本海側や外海に面して波浪が荒い太平洋側が主な)人力で 原料海水をくみあげる「揚浜式」の塩浜のふたつに分けられます。煎熬にも土釜の他、釜底に石を敷き詰め、その隙間を漆喰でうめた「石釜」が多くの地域で使 われるようになったほか、それまでは中国産で一般的なものではなかった「鉄釜」が国産化され一部の地域で、使われるようになりました。

塩田

①揚浜式塩田

塩田として古いのは、今も能登の残されている揚浜式塩田が約1200年前(平安時代)には文献として出ており、赤穂などで発掘調査も行われた。基本は粘土板の上に砂をまき、その上に海水を撒いて蒸発させて砂表面に塩を析出させ、その砂を集めて海水で溶かしてかん水をつくり、釜で煮詰める方法です。

②入浜式塩田 

昭和30年代まで行われた入浜式塩田は、約500年前(室町時代末期)には行われています。基本は海水満潮面よりやや低い所に砂でできた塩田をつくり、毛細管現象を利用して海水を表面に導き砂上に塩を析出させ、その砂を集めて海水で溶かしてかん水をつくり、釜で煮詰める方法です。

この入浜式は播磨の国赤穂(今の兵庫県)で17世紀中旬に始まり、それ以降、瀬戸内海沿岸の十カ国(備前、周防、讃岐 など)が日本の製塩の中心となり、「十州塩田」と呼ばれました。この入浜式塩田は改良されながら、1959年まで続きました。

一方、入浜式塩田に不向きな 三陸地方では、採鹹工程を行わず、海水を直接煮詰める海水直煮と呼ばれる製塩も行われていました。

③流下式塩田

昭和30年頃から昭和47年まで行われた方法は流下式塩田といいます。ポンプで海水を汲み上げ、わずかに傾斜した粘土盤でつくった塩田上に流して蒸発させ、さらに竹笹などでつくった立体濃縮装置(枝条架)に液滴状で流して風力で濃縮してかん水をつくり、これを釜で煮詰める方法です。

膜濃縮せんごう法

 昭和47年からは、塩田は姿を消し、工場内で塩をつくるようになりました。膜濃縮せんごう法による濃い塩水をつくり、立釜で煮詰める方法は安定して品質の良い安全な塩をたくさん作ることができます。